混植
明治大学特任教授 佐倉朗夫
有機栽培
ベランダ栽培では一つのコンテナに1種類の野菜を栽培することが多いのですが、自然界では、1種類の植物だけで生育していることはまれです。本来はいろいろな植物が混ざり合って存在し、互いが生存できる安定した生態系を作り出しています(食ったり食われたり、栄養分を与えたりもらったり、あまたの競争、寄生、共生の中でバランスが取れている)。それに対してコンテナ栽培は多様性が著しく低いため、バランスが崩れやすく不安定な系になります。そこで、同じコンテナに異なる作物を同時に作付ける(混植)と、土壌微生物も多様になり、天敵も増え、病害虫が抑えられて安定性が増します。
限られた狭い空間なので、栄養分や日照の競合がなるべく起こらない組み合わせが大切です。草丈の高低、吸収する養分の多少、養分の好み、発生する病害虫の種類などを考慮します。さらに天敵を増やす作物(オクラや麦など)、植物や微生物が特殊な物質を放出し周辺の生物に影響を与える現象(アレロパシー)などの利用も有効です。
トマトとニラ、キュウリと長ネギの混植では、それぞれの根が絡むように近くに植えると、トマト(萎凋病)、キュウリ(つる割病)の土壌病害を防ぐ効果があります。この他にも、葉ネギがホウレンソウの萎凋病、長ネギがイチゴの萎黄病を抑制することも知られています。さらに、根粒菌が根に共生するマメ科の野菜との混植は、窒素が供給されて生育を助けてくれます。例えば、トマト、ナスにはラッカセイ、ニンジンにはエダマメなどがよく利用されます。
混植では相性の悪い組み合わせもあります。「ダイコンとレタスとイチゴはニラと駄目」、「トマトとナスはジャガイモやトウモロコシと駄目」、「キュウリとスイカはインゲンマメと駄目」と覚えておきましょう。