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有機栽培の基本は土づくり

明治大学特任教授 佐倉朗夫
有機栽培

 無農薬、無化学肥料栽培を有機栽培と考える人が多いと思いますが、それは入り口にすぎません。生物の多様性と物質の循環を基本とし、作物本来の生命力を引き出す栽培です。

 有機栽培の基本は土づくりです。有機栽培で一番苦労するのは病害虫対策だと思いますが、実は土づくりを上手に行えば、被害はさほど大きくなりません。畑が自然生態系の営みの一部として機能し、共生や寄生の関係が複雑化することにより、病害虫だけが極端に増えることがなくなるからです。また、生態系の世界は、生物の種類と個体数が圧倒的に多い土壌中につくられやすく、そこで作物の根が十分に成長すると地上部も健全に育ち、病害虫にも強くなります。その根の成長のためにも土づくりは重要です。

 土づくりは、肥料を与えることではありません。作物の根が育つのに必要な酸素が十分ある状態、作物の生育を助けてくれる微生物が多く集まる環境をつくることです。それによって植物は根を伸ばし、根が伸びることで土を耕します。すると通気性が良くなり微生物も増え、さらに根の成長が促されます。小動物や微生物は有機物を食べ(=分解し)、有機物が分解されてできた栄養分が土に蓄積し土がつくられます。森林の土は耕しもせず、肥料も与えないのに多くの植物が育つのは、このような植物と多様な生物との関係の中で、栄養分が循環しているからです。

 ベランダ菜園ではコンテナ(プランター)を使いますが、幅50~60cm、奥行き20~30cm、深さ30cmくらいあればほとんどの野菜が栽培できます。土は赤土(中粒赤玉土での代用可)、腐葉土を3:2で混ぜ、パーライトを10%加えて作ります。ここから5分の1程度を分け、できるだけ細かく砕いて播(は)種用の土にします。残りにぼかし肥料を土量1Lに対して1g混ぜたものをコンテナの底に敷き詰めた鉢底石の上に入れ、その上に播種用の細かい土を載せます。これで種まき、植え付けの準備は完了です。

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