愛情込めて育てた豚肉を地域へ
厚木市飯山にある有限会社臼井農産は、市内最大の養豚業者。厚木の豚のおいしさを広めようと、飼育から「とん漬け」などの商品製造、流通までを一貫して手掛けています。試行錯誤を繰り返してたどり着いたのは、ブランド豚の生産。その味は、たっぷりと注がれた愛情の結晶です。
日本の養豚は、江戸末期時代に始まり、次第に厚木市でも盛んになり、約40年前には約300軒の養豚場がありました。都市化の波の到来とともに住環境への影響が拡大し、徐々にその姿は減少しました。臼井農産は2ヘクタールの広大な敷地で約5,500頭を飼育し、市内の出荷頭数の8割を占めています。
社長の臼井欽一さんが養豚業を営むきっかけとなったのは、両親が知り合いから預かった数頭の豚だった。大切に世話した豚が交配と繁殖を繰り返し、徐々に頭数が増えていきました。高校を卒業と同時に、本格的に養豚の道に入り、ノウハウを一から身に付けていきました。
作業現場で豚にじかに接しながら養豚業を学んだ臼井さん。社長に就任したことを機に、厚木の豚肉をもっと価値あるものとして認めてもらうため、ブランド化する戦略の実現に動き出したと、当時を振り返ります。臼井さんはまず、餌の改良に取り掛かり、既製品ではなく、麦やお茶、そば粉などを独自に配合した自家製の餌を開発。丹沢山地のきれいな水を与えることで、臭みの少ない、柔らかい肉質と甘みのある脂身に仕上げています。市内の飲食店からも、味、安全性ともに全幅の信頼を置かれています。
市内の店舗への提供に加え、多くの市民に自社の豚肉のおいしさを実感してもらうことを大切にしている臼井さん。生産者が、生産から加工、販売までを一貫して手掛ける6次産業化を推進し、厚木を代表する「とん漬け」や「シロコロ」はもちろん、自家製のたれに絡めた豚肉やコロッケ、ギョーザなどさまざまな商品を自社の直売所やJAあつぎ農産物直売所「夢未市」などで販売しています。さらに、市内の保育所に1頭分の豚肉を寄贈したり、学校給食に使ってもらえるよう計画するなど、厚木の子どもたちに「厚木の豚を食べて育った」と思ってもらえる取り組みにも力を注いでいます。
臼井欽一社長は「より多くの地域の人においしい豚肉を味わってもらうため、ありったけの愛情を込めて育てている。今後も、厚木の豚のおいしさを広げる活動を積極的に展開していきたい」と意気込みを語ります。