キュウリ
(ウリ科キュウリ属)
日本では「サツマイモを食べるとおならが出る」といわれますが、米国では「キュウリを食べるとげっぷが出る」と考えられています。米国で主に流通しているキュウリは短太でとげがないです。日本のとげのある品種は食べてもげっぷが出ないので、Burpless Cucumberと呼ばれています。
ウリ科野菜は雌雄異花で、一つの株に雌花と雄花を付けます。カボチャやスイカも実を付けるためには雌花の雌しべに雄花の雄しべの花粉を付ける人工交配をします。ところが、キュウリは単為結果(たんいけっか)といって、雄花の花粉が付かなくても実がなります。
キュウリの原産地はインドのヒマラヤ山麓です。西域(胡・こ=現在の中央アジア方面)から中国を経て日本に伝わったので、漢字では「胡瓜」と書きます。熟すとヘチマのように大きくなり、果皮が黄色くなるので「黄瓜」とも書きます。私たちが食べているキュウリは熟すだいぶ前の幼果です。
団塊の世代が子どもだった頃のキュウリは、果柄に近い肩部に苦みがありました。切り口をこすり合わせて苦みを抜いたことがある人もいると思います。苦みはウリ科植物特有のククルビタシンという成分で、今のキュウリには品種改良によってほとんど含まれていません。
キュウリやブドウなどは暑さや病気から果実を守るブルームという白い粉を吹きます。ブルームは軽い接触でも落ちてしまうので鮮度の指標でしたが、対面での説明がないスーパーでは農薬と勘違いする消費者もいました。1980年代中ごろ、特定のカボチャに接ぎ木するとブルームの出ないことが分かり、ピカピカのキュウリ一色になりました。
キュウリの切り口は徳川家の葵(あおい)の紋に似ているので、江戸時代の武士は恐れ多くて食べなかったといわれています。今はキュウリをサラダにしても酢の物にしても権力者によって罰せられることはありません。
藤巻久志(ふじまきひさし)
種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。