ジャガイモ
(ナス科ナス属)
ジャガイモもトマトも、ナス科ナス属です。意外に思うかもしれませんが、花を見ればどちらもナスの花に似ているので納得します。ジャガイモはミニトマトのような実を付けることがあり、その実にはアルカロイドという毒が含まれているので食べられません。
原産地は南米のアンデス地方です。16世紀にスペインがインカ帝国を征服したことを機に欧州に伝わりました。フランスのルイ16世は救荒作物としてジャガイモを奨励し、王妃のマリー・アントワネットはジャガイモの花を髪に飾りました。
ジャガイモは野生種を含めると約5000種あり、形も肉色もさまざまです。花色も白や赤などいろいろあります。マリー・アントワネットが愛したジャガイモの花の色は青といわれています。
19世紀中ごろにアイルランドでジャガイモに疫病がまん延して飢饉(ききん)が起き、ケネディ元大統領やウォルト・ディズニーの祖先が米国に移住しました。一つの作物、一つの品種だけに頼る危険性があらわになった歴史上の大事件です。多様性が大切です。
同じ作物や品種を作り続けると、それらを好む害虫や病原菌が寄ってきます。特定の微量要素を吸収するため欠乏症も発生します。連作障害です。防ぐには異なる作物を順に繰り返して栽培する輪作が有効です。
わが国には、16世紀末にオランダ人が長崎に伝えました。ジャワ(現インドネシア)のジャガトラ(現ジャカルタ)経由だったのでジャガトライモと呼ばれ、それが転じてジャガイモになりました。日本で本格的な栽培が始まったのは、明治時代後期に川田龍吉男爵が英国からホクホクとした食感の「男爵薯」を導入してからです。
大正時代になると煮崩れしにくい「メークイン」が米国から入り、長い間「男爵薯」と二大品種の時代が続きました。今は果皮が紫や赤の品種も続々登場し、トマトやナスと同じく多品種の時代になりました。
藤巻久志(ふじまきひさし)
種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。