ニンニク
(ヒガンバナ科ネギ属)
「一粒万倍日」と記載されたカレンダーがあります。一粒万倍とは1粒の米の種子が万倍にもなるという意味で、一粒万倍日は何事を始めるにも良い日とされています。購入金額の万倍にもなるというので、「本日は一粒万倍日」と掲示する宝くじ売り場もあります。
ニンニクは種子でなく、球根で増やします。種子で増やすものを種子繁殖、球根や挿し木などで増やすものを栄養繁殖といいます。ニンニクは種球を分球して栽培します。ベランダのプランターでも簡単に栽培できます。日本の主流品種の「ホワイト六片」は、収量が種球の6倍にしかならないので、種球も青果も高価です。
原産地は中央アジアで、古代エジプトではピラミッドの建設労働者に強壮剤として食べさせました。日本には中国経由で伝わり、汚れや悪疫をはらうものとして神事にも用いられました。『源氏物語』の「帚木(ははきぎ)の帖」にも臭い薬草として登場します。仏教が普及すると、避けるべき食材の一つになり、一般の日本人が本格的に食べるようになったのは、戦後にギョーザが定着してからだといわれています。
米国の国立がん研究所はがん予防に効果が期待される食品をピラミッド型に並べた「デザイナーフーズ」を1990年に発表し、そのトップにニンニクを選定しました。特有のにおいの成分はアリシンで、がん予防だけでなく、殺菌作用があるので風邪やインフルエンザなどにも効果があります。ビタミンB1の吸収を良くし、疲労回復やスタミナ強化に役立ちます。
ニンニクは中国、韓国、イタリアなど世界のさまざまな国の料理に利用されています。日本料理のカツオのたたきにも欠かせません。
掘りたてのニンニクにそのままみそを付けて食べられるのは家庭菜園の醍醐味(だいごみ)です。においさえ気にしなければ翌朝は、万倍は大げさですが、元気百倍になります。
藤巻久志(ふじまきひさし)
種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。