オカヒジキ
(ヒユ科オカヒジキ属)
海や川などの水中ではなく、陸地で育つことから、オカ(陸)の名が付いた作物があります。水田ではなく畑で作る米はオカボ(陸稲)。葉を乾燥させてあぶると、のりのようになるからオカノリ(陸海苔)。オクラは輪切りにした断面がレンコンに似ているからオカレンコン(陸蓮根)。ワサビダイコン(ホースラディッシュ)は清流ではなく、畑で栽培されるからオカワサビ(陸山葵)。
オカヒジキ(陸鹿尾菜)も海藻のヒジキに似ていることからこの名が付きました。オカヒジキはヒユ科オカヒジキ属の陸上の植物、ヒジキはホンダワラ科ホンダワラ属の海中の植物です。どちらも多肉質で、クロロフィル(葉緑素)を持ち、光合成を行います。
オカヒジキはアジア、シベリア、欧州に自生し、日本でも各地の海岸砂地に見られます。山形県の内陸部では江戸時代から野菜として栽培されています。1970年代には市場で流通するようになり、高知県や長野県などにも産地ができました。
露地物のピークは5~7月ですが、ハウスの無加温や加温栽培が加わり周年供給されるようになりました。病害虫に強いため、ほとんどが無農薬栽培です。種まき後1カ月で伸びる葉を順次摘み取り、パック詰めで出荷します。
カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルを豊富に含みます。カリウムは取り過ぎたナトリウムを排出することから、高血圧の予防や改善に効果があるといわれています。がんや老化の予防に注目されているベータカロテンも豊富です。
シャキシャキとした歯触りで、味に癖がなく、軽くゆでるだけで食べられます。緑色が美しく、おひたしやサラダなどに利用できます。
ヒジキは、大豆やニンジンなどとの煮物がおふくろの味として人気です。オカヒジキのおふくろの味はみそ汁やからしあえでしょうか。
藤巻久志(ふじまきひさし)
種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。