マスクメロン
(ウリ科キュウリ属)
団塊の世代が結婚適齢期になった1970年代には、それまで自宅で行われていた結婚式がホテルや結婚式場で行われるようになり、披露宴ではほぼ必ずマスクメロン(アールスフェボリット)が出されました。メロンのつるが鶴、ネット(網目)が亀に例えられ縁起が良いとされたからです。
つる付きで販売されるメロンは専用のガラス温室で立ち栽培されたマスクメロンだけでした。マスクは仮面ではなく、麝香(じゃこう。香料=英語でムスク)を意味します。マスクメロンは甘さよりも独特の香りと食感を楽しむ果物です。
ビニールハウスで地ばい栽培された大衆向けのメロンは、糖度だけならマスクメロンよりも高いですが、香りと食感はマスクメロンにかないません。付いているつるは、1株から1果しか取らない高級メロンの証しで、大衆メロンはネットメロンであってもつるは付いていません。
メロンのネットは、果皮の成長が止まった後に内部が肥大することによってひび割れてできたかさぶたのようなものです。徐々にひび割れないと、きれいな網目模様にはなりません。マスクメロンは肥料と水分の吸収を完璧に管理するために、地面から隔離したベッドで栽培します。
マスクメロンは専用施設と高度な栽培技術によって作られるので、1個数千円から数万円という価格で販売されるのです。高度経済成長期前には、入院した庶民が高根の花のマスクメロンを見舞いにもらい、自分の病気はそんなにひどいのかと勘違いして落胆し、病状が悪化してしまったという話があります。
マスクメロンは収穫後数日で食べ頃になります。低温の冷蔵庫では追熟が進まず、常温の所に置くと甘い香りがしてきます。食べる2時間くらい前に冷蔵庫に入れて冷やします。
メロンのライバルはイチゴです。メロンもイチゴも贈答用のきり箱入りの物があります。
藤巻久志(ふじまきひさし)
種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。