タカナ
(アブラナ科アブラナ属)
種袋の裏面は情報の宝庫です。品種特性、原産地、発芽適温、生育適温、種まき時期、株間、収穫日数などが記載されています。種苗法では業者名、種類と品種、生産地、採種年月または有効期限、発芽率、数量の表示が義務付けられています。
昭和時代の野菜種子の生産地はアスパラガスやビートなどの洋菜以外は国内でしたが、今はほとんどが海外です。国内採種農家の減少、異常気象による危険の分散、生産コストなどが要因です。採種年月の表示はなくなり、有効期限になりました。
春まく種は春種、秋まく種は秋種といいます。国内ではダイコンやハクサイなどのアブラナ科野菜の種は初夏に採れ、種苗店の店頭には「新ダネ入荷」ののぼりが立ったものです。野菜が周年栽培されるようになり、春種と秋種の区分は少なくなりました。
タカナは昔も今も秋種です。春にまくととう立ちしてしまいます。アブラナ科野菜の多くは低温に遭うととう立ちしますが、タカナは低温には左右されずに、長日によってとう立ちします。
タカナはカラシナの一種で、一般に株が大型、葉が多肉のものをいいます。福岡県の「三池タカナ」や長崎県の「雲仙コブタカナ」などが有名です。低温伸長性があり、作りやすい葉菜です。
タカナは「野沢菜」「広島菜」と並んで日本三大漬け菜の一つです。主に古漬けしますが、浅漬けもできます。古漬けを材料にした刻み高菜漬けは、高菜ご飯や油炒めなど和風、洋風、中華に幅広く利用されています。特に高菜漬けチャーハンがおいしいです。
中国料理に欠かせないザーサイもタカナの仲間で、茎タカナともいいます。茎の下の方の葉の付け根部分が5~8cmのこぶ状に肥大し、その多肉の塊を食します。家庭菜園で栽培すると、周りの人々は「これがザーサイ!?」と驚きます。
藤巻久志(ふじまきひさし)
種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。