水菜
(アブラナ科アブラナ属)
水菜は京都原産の伝統野菜で、流水を畝間に引き入れて栽培したので「水菜」の名が付いたといわれています。関東では「京菜」とも呼ばれています。水菜には細茎種と広茎種があります。細茎種は小株で売られることが多いですが、4kgの大株にすると600枚以上の葉数になり、千筋(せんすじ)京菜の別名があります。広茎種はハクサイ並みの大株で収穫します。
昭和中ごろの横浜では、冬野菜のハクサイが終わると広茎の「磯子京菜」が八百屋に並び、春が近いことを感じたものです。磯子の高台には美空ひばりの「ひばり御殿」が立っていました。
水菜はシャキシャキとした歯切れの良さが特徴で、鍋物や煮物、漬物などに利用されます。薄切りにしたクジラ肉を用いた関西のはりはり鍋が有名です。油揚げとの煮びたしもおいしいです。
カロテンやビタミン類を豊富に含み、がんを予防する野菜といわれています。カリウムや鉄などのミネラルも多く、特にカリウムはナトリウムの排せつを促進し高血圧の予防や改善の作用があるとされています。
水菜は海外でもMizunaやKyonaと呼ばれ、葉形の面白さや食感からサラダで食されています。水菜を生食する慣習がなかった日本では、欧米からの逆輸入で、30年くらい前から外食産業がサラダに使うようになりました。
幼苗から切り込みのある独特の葉形になるので、ベビーリーフサラダには欠かせません。ベビーリーフサラダにはチンゲンサイやタアサイなどの中国野菜も入るので、オリエンタルミックスとも呼ばれています。
壬生菜は水菜の変種で、葉に切れ込みがなく、ピリッとした辛味があります。主に漬物に使われ、千枚漬けには塩漬けが青みとして添えられることが多いです。
水菜や壬生菜は、他のアブラナ属野菜と交雑します。伝統野菜は採種技術も引き継がれ、今も品質が維持されています。
藤巻久志(ふじまきひさし)
種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。