山芋
(ヤマノイモ科ヤマノイモ属)
山芋とヤマノイモの名は混同して使われることが多いです。どちらもヤマノイモ科ヤマノイモ属の野菜ですが、種(しゅ)が違います。染色体数も山芋はn=70、ヤマノイモはn=20と異なります。山芋は中国原産で、ナガイモ、イチョウイモ、ツクネイモなどがあります。ヤマノイモは日本原産で、自然に生えている薯(いも)なのでジネンジョともいい、芥川龍之介の『芋粥(いもがゆ)』の「芋」です。
ナガイモは長形(こん棒形)で生育が早く、東北や長野などの寒冷地で多く栽培されています。土層の深い軽い土壌が適しています。肉質は粗く、水分が多くて粘り気が少ないので、千切りにして酢の物などにします。短太の品種に「徳利薯(とくりいも)」があります。
イチョウイモは扁平(へんぺい)で、イチョウの葉のような形のものが多いです。手のひらの形をしている「仏掌薯(ぶっしょういも)」もあります。関東や東海で多く栽培されています。短根なので土層の浅い畑でも栽培できます。粘りがあり、とろろ汁などにします。
ツクネイモは塊形(げんこつ形)で「伊勢薯」「丹波山の芋」「大和芋」などの地方品種があり、主に関西で栽培されています。粘りがとても強く、品質に優れています。とろろ汁の他、高級和菓子の材料としても利用されています。
山芋は春に種芋を数個に切断して植え付け、冬に収穫します。秋に着生するムカゴからも増やすこともできますが、収穫まで2年かかります。ムカゴは葉の脇芽が変形して芋のように肥大したもので、むかごご飯や塩ゆでが美味です。
ジャガイモやサツマイモなどは加熱しないと食べられません。山芋はアミラーゼを多く含んでいて、でんぷんの消化を助けてくれるので生でも食べられます。麦飯は植物繊維が多いですが、とろろ汁をかけると、かまずに飲み込んでも消化してくれて、精が付きます。
藤巻久志(ふじまきひさし)
種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。