ツルムラサキ
(ツルムラサキ科ツルムラサキ属)
化学合成農薬は日本では第2次世界大戦後から広く使われるようになり、食糧難を克服するのに大きく貢献しました。しかし、1962年にレイチェル・カーソン著『沈黙の春』が刊行されると、農薬の毒性や残留性などが大きな問題となりました。
今は天然物由来の有効成分で有機栽培にも使用できる農薬も開発されていますが、できる限り無農薬栽培をしたいものです。そのためには耕種的防除という病害虫が発生しにくい栽培技術を用います。適期適作や輪作、有機物施用の土づくり、抵抗性品種の使用などです。
ウイルス病やアオムシなどの病害虫が発生しやすい時期には、被害がほとんどないツルムラサキを栽培するのも一つの方法です。ツルムラサキは名前のようにつるが紫と思われがちですが、つるが緑色の青茎種と紫色の赤茎種があります。両種とも葉の付け根に濃い紫色の実がなることから、ツルムラサキの名前が付きました。
青茎種は江戸時代初期、赤茎種は明治時代に渡来しました。青茎種の花は白色、赤茎種は薄紫色です。青茎種は食用に、赤茎種は観賞用に使われることが多いです。
温暖地では4月下旬に種まきすると11月まで長期間収穫することができます。短日性で秋になると花穂を付けますが、茎葉が堅くならないうちは食べられます。
熱帯アジア原産で暑さに強く、青物が少ない夏場に重宝します。骨を作るカルシウムをホウレンソウの3倍以上含み、疲労回復に効果があるビタミン類も豊富です。
葉が肉厚で柔らかく、生でサラダにもできますが、少々土臭さがあります。加熱すると粘りが出て、土臭さも気にならなくなります。おひたしやあえ物、炒め物などに利用できます。
藤巻久志(ふじまきひさし)
種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。