ハクサイ(アブラナ科アブラナ属)
ハクサイは日本で昔から作られてきた野菜と思われがちですが、実際は日清・日露戦争で中国大陸に出征した兵隊が持ち帰った種子が始まりです。時代劇で長屋のおかみさんたちが井戸端でハクサイを洗う様子が映っていたら、時代考証が間違っています。
ハクサイは英名でチャイニーズキャベツというように原産地は中国で、カブとパクチョイの自然交雑からできたと考えられています。種子は遣唐使の時代には日本に入っていたはずですが、定着しなかったのはアブラナ属の野菜だからです。ほとんどのアブラナ属は他家受粉で、周りにナバナが咲く畑では、他のアブラナ属と容易に交雑し、品種独自の形質を維持できません。
ハクサイには結球、半結球、非結球の3種類があり、最も多く流通しているのは結球タイプです。結球ハクサイの品種純度を保つため、大正時代に宮城県の松島で隔離栽培・採種が開始され、戦前には同県が日本一の産地になりました。
昭和時代のハクサイの用途は漬物用が大きな比重を占めました。今、漬物は買う時代になり、漬物だるもない家庭がほとんどです。それでもハクサイは淡泊な味を生かし、鍋物、炒め物、みそ汁の具などに幅広く使われています。サラダにすればボリュームがあり、簡単で安価です。
ハクサイの大部分は水分ですが、ビタミンCやカリウムなどを多く含んでいます。ビタミンCは風邪の予防に、カリウムは塩分を排出する作用があるので高血圧予防に役立ちます。
小家族が増え、ハクサイ、ダイコン、スイカなどの大型野菜はカット売りされるようになりました。それらのミニ野菜も開発されています。ハクサイは半分や4分の1にカットされても成長が続くので、芯が膨らんできます。膨らみが目立つ場合は、鮮度が落ちています。ミニハクサイを丸ごと使い切るのも一つの選択肢です。
藤巻久志(ふじまきひさし)
種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。