サツマイモ(ヒルガオ科サツマイモ属)
サツマイモ(スイートポテト)もジャガイモ(ポテト)も救荒作物です。どちらも原産地は中南米で、コロンブスの新大陸発見により欧州、アフリカ、そしてアジアに伝えられました。サツマイモは根が肥大した塊根(かいこん)、ジャガイモは茎が肥大した塊茎(かいけい)です。
野菜の名前には歴史や逸話があって面白いです。サツマイモは薩摩国から江戸に伝わったから「薩摩芋」。薩摩国には琉球から伝わったから「琉球芋」。琉球には唐から伝わったから「唐芋」(からいも)。中国では甘い薯(いも)だから「甘藷」(かんしょ)です。
沖縄県のサツマイモは、植物防疫法によって、本土に持ち込むことが規制されています。本土には生息していないイモゾウムシのまん延を防止するためです。沖縄県はウリミバエ根絶で開発された技術を基に防除事業を行っています。近い将来、肉色が赤や紫の「紅イモ」が本土でも食べられるようになると思います。
収穫直後のサツマイモは甘くありません。でんぷんが糖化するのに2〜3週間かかります。貯蔵期間が長くなると甘味は強くなりますが、ホクホク感は薄れます。貯蔵適温は13度で、10度以下の低温に長く置くと中が黒く腐敗します。一般家庭では購入後できるだけ早く使い切ることをお勧めします。
サツマイモはあくが強く、切り口が空気に触れると黒く変色します。きんとんやサラダなど色を美しく料理したいときは、皮を厚めにむき、すぐに水に漬けます。漬け過ぎると水溶性のビタミンCが流失してしまうので短時間にします。
戦中から戦後にかけて、アルコール製造用の多収の品種が、まさに救荒作物として国民を飢餓から救いました。しかし、アルコール製造用の品種は粘りも甘さも少なく、サツマイモを見るのも嫌だという人が増えました。今は「安納芋」や「べにはるか」などとてもおいしい品種が栽培され、ケーキやアイスクリームにもなっています。
藤巻久志(ふじまきひさし)
種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。