ラッカセイ(マメ科ラッカセイ属)
ラッカセイは漢字では「落花生」と書きます。開花後に子房柄(しぼうへい)が地中に侵入し、サヤを作る不思議な植物です。ラッカセイの完熟子実(ピーナツ)は食用作物に分類され、野菜の本には載らないこともあります。未熟子実(ゆでラッカセイ)は野菜ですが、全世界の生産量はごくわずかです。
ラッカセイは南米原産で、コロンブスの新大陸発見後に欧州、アフリカ、アジアで栽培されるようになりました。日本には18世紀初頭に中国から伝わったので、南京豆と呼ばれました。
ラッカセイの花は一日花で、早朝に開花して午後にはしぼみます。マメ科野菜の花はチョウの形をしていて、魅力的な物が多いです。家庭菜園では春には薄紫色のソラマメの花、夏には黄色のラッカセイの花、秋には水色のシカクマメの花が楽しめます。
殻の表面に浮き上がっている筋は維管束で、水や栄養分の通り道です。維管束は子実が熟してくるとはっきりとしてきます。ラッカセイの完熟子実の収穫は、葉が黄変した頃に株ごと引き抜いて乾かします。ゆでラッカセイはその20日くらい前に収穫し、すぐに利用します。
殻は中の子実を守るために堅いです。石灰は土壌酸度を改良するために栽培の前に施しますが、細胞壁を強くする効果もあります。ラッカセイのサヤの充実には石灰が必要で、石灰が不足すると未熟サヤや空サヤが多くなってしまいます。産地では開花後に石灰を散布し、畑が真っ白になることもあります。
「黒ラッカセイ(ブラックピーナツ)」はサヤに子実が2〜4粒入ります。一般の品種は1粒入りもありますが、ほとんどは2粒入りの双子です。双子の歌手といえばザ・ピーナッツ。1959年のデビュー曲『可愛い花』のB面は『南京豆売り』です。どちらも世界的ヒットのカバー曲です。
藤巻久志(ふじまきひさし)
種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。