ネギ(ヒガンバナ科ネギ属)
ネギの葉は緑色の葉身部と白色の葉鞘(ようしょう)部に分かれます。関西では葉身部を食べ、青ネギや葉ネギともいいます。関東では主に葉鞘部を利用し、白ネギや根深ネギともいいます。「田舎者は白いところまで食べる」と関西人が言うと、「ケチは青いところまで食べる」と関東人が言い返す笑い話があります。
ネギも交配種の時代になりましたが、固定種もまだまだ栽培されています。固定種は地域の名前を冠した物が多いです。下仁田(群馬)、岩槻(埼玉)、千住(東京)、松本(長野)、金沢(石川)、越津(愛知)、九条(京都)、岩津(兵庫)、観音(広島)などです。
ネギは春になるとネギ坊主を付けます。ネギの花のつぼみです。若いネギ坊主は食べることができます。天ぷらや酢みそあえもいいですが、塩こしょうで炒めるだけでも美味です。形がかわいく、ほろ苦い不思議な食感です。花開くためのエネルギーをたっぷり含んでいそうです。
ネギ坊主が大きくなると、種ができます。ネギのほとんどは種から育てる種子繁殖です。九条ネギや岩槻ネギは分けつするので、株分けして育てる栄養繁殖もできます。下仁田ネギは分けつしません。千住ネギや松本ネギなど分けつしない物は一本ネギともいいます。
根深ネギの栽培は、葉鞘部を軟白するために植え溝を深く掘り、成長に伴い土寄せをする重労働です。葉ネギはその必要はなくプランター栽培もでき、納豆や麺類の薬味、みそ汁の具など用途が広いので重宝します。
1970年代、福岡県朝倉市で栽培された葉ネギの「博多万能ねぎ」が毎日東京へ空輸されるようになりました。日本初の「フライト野菜」として注目され、瞬く間に白ネギ文化の関東に青ネギ文化が広まりました。
近年は関西でもすき焼きや焼き鳥などに白ネギが使われていて、東西の差はなくなりつつあります。
藤巻久志(ふじまきひさし)
種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。