ニラ
(ヒガンバナ科ネギ属)
ニラは中国原産で、ほとんどが東洋で栽培されています。日本では8世紀ころから栽培され、『古事記』や『万葉集』にも登場します。ギョーザやニラレバ炒めなどの中国料理には欠かせず、おひたしや卵とじなどの和食にも利用されています。
ニラがとう立ちしてつぼみが付いた花茎を「ハナニラ」といい、おいしく食べることができます。
ニラは高温・短日に感応して花芽分化し、秋に白い花を咲かせます。ハナニラは開花前の小さくて柔らかいつぼみと茎を利用します。つぼみが大きくなると茎が堅くなり食用には適しません。
葉菜類は開花・結実させると株が弱りますが、ニラは根が強健なのでつぼみが付いたくらいでは影響はありません。「テンダーポール」という品種はハナニラ専用種で、温度や日長に鈍感なため、年に数回の収穫が可能です。
「テンダーポール」は中国野菜に分類され、ジオウツァイタイ(韮菜苔)と呼ばれています。中国ではコウサイタイ(紅菜苔)やサイシン(菜心)など、とうと花蕾(からい)を食べる野菜が多いです。花蕾には種子を作るエネルギーがあると考えられ、実際にミネラルやビタミン類を豊富に含んでいます。
ハナニラの収量はニラと比べるとごくわずかです。鮮度が落ちやすいので、市場にはほとんど出ません。高級食材といわれるゆえんです。ニラ特有の臭みがなく、爽やかな香りと甘みがあり、シャキッとした歯応えが魅力です。
「テンダーポール」の種子は、ホームセンターや通信販売などで入手できます。プランター栽培も簡単です。家庭で本格的な中華料理を楽しみましょう。中華料理というと強火での野菜と豚肉の炒め物を連想しがちですが、軽くゆでたハナニラとイカのあえ物も絶品です。
花を観賞する球根植物に同名のハナニラ(ヒガンバナ科ハナニラ属)があり、こちらは有毒で間違って食べると激しい下痢を起こします。
藤巻久志(ふじまきひさし)
種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。