水稲における今後の水管理と台風対策について
いよいよ水稲の収穫時期を迎えます。これまでの栽培管理を無駄にしないためにも、適正な水管理を継続し、登熟の向上に努めることが大切です。今回は、今後の水管理と台風対策についてご紹介いたします。
また、収穫適期の判定などについては、8月末から9月上旬に各地区で開催する水稲収穫時期現地検討会にて説明いたします。ぜひご参加ください。
これからの水管理で大切なこと
①乾かさない! ②ずっと溜めない! ③早期落水しない!
間断潅水の実施
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登熟期間が高温で推移する場合は、刈り取り3〜5日前まで、間断潅水を継続します。
間断潅水を実施する事により、根に酸素を供給しやすくし、根の健全化を促し、健全な登熟を促進させます。
※間断潅水…湛水状態と落水状態を数日間隔で繰り返す水管理の事(極端に土壌を乾かさない)
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早期の落水は、玄米の充実を妨げるほか、着色粒、胴割粒等の発生を助長するため、用水が切れる前に十分に湛水し、できる限り遅くまで土壌水分を保持します。
台風対策について
用排水等の対策
圃場ごとに畦畔や水口・水尻の整備に努め、稲への影響を低くするために深水湛水します。
※通常台風による大雨を予測し、堰を切ることが一般的であるため、用水に水がある間に湛水するよう注意します
栽培技術・管理対策
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深水湛水する:倒伏や急性萎凋を防ぐため、水田に水を深く張り湛水に努めます。
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早期収穫する:成熟期が近い場合は倒伏や穂発芽を防ぐため、やや早くても収穫します。
※成熟期(収穫時期)の5〜7日前の収穫は、収量・品質への影響はほとんどない
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収穫適期が過ぎている場合:機械が使用できるような状況になったら速やかに収穫します。
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倒伏や株が抜けやすくなっている場合:砂利等の異物混入を防ぐため、高めに刈り取りをします。
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穂発芽を防止する:倒伏した株は、穂発芽しやすいため、数株まとめて縛り、穂が地面や水面につかないようにします。
台風による主な被害
①大雨と河川の増水による浸水や冠水。
②強風による葉の傷、倒伏、急性萎凋症。
③フェーン現象による、登熟障害や萎凋。
※神奈川県の南側を台風が進む場合、北からの風が山を越えるときに、降雨を伴わない、乾燥した風が山の南側に吹く事がある。日本海側に吹く「フェーン」と概ね同じ現象である。
注)急性萎凋症は風台風の場合、乾燥した風により、急激な蒸発散に根からの吸水が追いつかない事から、稲の水分バランスが崩れ、葉が萎れる現象で、生育が回復する見込みは低い。
※登熟期に被害を受けた場合、乳熟期の被害程度が最も大きく、登熟が進むに従って、収量への被害程度は軽くなるが白未熟粒〜胴割粒まで広く品質が低下する。