JAあつぎ

営農通信Farming communication

土壌アルカリ化の弊害と改善法

 JAあつぎ管内では、土壌pH(ペーハー:酸度)が7.0以上となっている例が多く見受けられます。それに伴い、カリウム、苦土、鉄、ホウ素などの欠乏症が出ることがあります。今回は、アルカリ性になった土壌による生理障害やpHを下げる方法などをご紹介します。

なぜ土壌がアルカリ性になる?

 土壌がアルカリ性になるのは、石灰のやりすぎが原因と考えられます。さまざまな技術資料で、野菜苗の植え付け前には、堆肥(主に牛糞堆肥)と石灰をやることが鉄則のように書かれています。しかし、これは日本の畑作土壌のpHが5.0 ~ 6.0の弱酸性であることを前提としたものであり、この数値が6.5以上である場合には、石灰を施用すると、pHが上がりすぎ、アルカリ化による障害が生じやすくなります。

 もう一つ、JAあつぎ管内の土壌pHが高い原因として、地下水のpHが7.0以上の地域が多いことが挙げられます。そのため、かん水に井戸水を使用したり、地下水位が高い(浅い)畑における影響も考えられます。

畑作土壌のアルカリ化による生理障害と類似の症状

 ホウレンソウはpH6.5 ~ 7.5とアルカリ土壌を好み、ブルーベリーなどのツツジ科植物がpH4.5 ~ 5.5を好むのを除けば、ほとんどの作物は、pH6.0 ~ 6.5の範囲であれば、正常に生育します。

 しかし、この範囲よりもpHが高い場合には、カリウム、苦土、鉄、ホウ素などの欠乏症が出やすくなるので、注意が必要です。この中で、苦土欠乏は、カリウム過剰の時に出やすいので、バランスを考え、元々カリウムが多い畑では、施肥量を少なめにすることも必要です。苦土欠乏とカリウム欠乏は下位葉に症状が出やすく、マンガン欠乏は中上位葉に症状が出やすくなります。いずれも葉脈の緑が残り、葉脈間の緑が薄くなる症状が出ます。

 鉄欠乏は窒素欠乏と同じように葉の緑色が白っぽくなるクロロシスという症状が出ますが、窒素が植物体内で新しい組織に移動するのに対し、鉄は移行性が低いため、上位の葉にクロロシスが現れます(反対に窒素欠乏は下位の葉からクロロシスが出ます)。苦土欠乏も下位の葉から症状が出ますが、葉脈部分は緑色が残るのが特徴です。

※石灰は十分あるのに、葉先の枯れやトマトの尻腐れ病が出ることがあります。この原因として、長雨などで、土中の酸素が不足し、根が呼吸できず、根の伸長が止まって石灰を吸えなくなっていることが考えられます。この際は、土中に酸素を供給してやることが必要となります。台風や長雨が想定される9~10月に生育期が重なる作型で作物を作る際には、持続型酸素供給剤「オキソパワー5」(5カ月間にわたり効果がある)を定植時に土に混入することで、ある程度発生を抑えることができます。

トマト カリウム欠乏症

キュウリ マンガン欠乏症

キャベツ マグネシウム欠乏症

pH を下げるには?

 pHを上げるには石灰を施用すればよいですが、pHを下げるにはどのようにしたらよいでしょうか。一例をご紹介します。

 ハウス栽培などで、かん水用の地下水を貯めるタンクがある方は、地下水そのもののpHを下げる方法があります。希硫酸や希硝酸を井戸水に混ぜる方法です。また、土のpHを下げるには、土壌改良用硫黄紛を土に混ぜる方法があります。どちらも、混入量、使用法には注意が必要なので、各地区の営農指導員にご相談ください。

 年に1回は、土壌診断をし、自分の畑土の性質を把握しておくことが重要です。少量の土を乾燥後、各支所に提出するだけで、組合員であれば料金はかかりません。結果が出るまでには、1 ~ 2カ月かかりますので、早めに提出をお願いいたします。

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