夏から秋の異常気象に負けない農業を目指して
近年、梅雨明け前後から高温で降水量の少ない状態が続いています。また、昨年の秋冬作については、二度の台風襲来などによって土壌水分過多による生育遅延も多くみられました。
今回は、高温乾燥対策と土壌水分過多による根の伸長停止対策について考えてみましょう。
露地栽培における対策
1
露地野菜では、敷わら、マルチフィルム、べたがけ資材等を使用して、地表面からの水分の蒸散を抑えてください。かん水は、地温が低下している早朝か夕方に行ってください。育苗中の夕方かん水や通風不良は徒長しやすいので避けましょう。
2
育苗中は、気温の高い日中は不織布、寒冷紗等で日よけを行ってください。高温乾燥条件で発生しやすいハダニ類、アブラムシ類、アザミウマ類、カメムシ類などの早期発見に努め、的確な防除を行いましょう。その際、整枝、誘引を併せて行い風通しを良くします。また、老化葉、黄化葉を中心に摘葉を行い、葉面からの蒸散抑制、薬剤の付着効果を高めることができます。
3
生長点付近の先端部分が細くなるなど草勢の低下がみられる場合は、不良果の摘果を行い着果負担を軽減し、草勢維持・回復を図りましょう。追肥は粒状肥料では効果が低く、その後の降雨があった際に一気に効いて草勢を乱すことがあるので、液肥での葉面散布が効果的です。
4
定植時は、苗と植え穴へ十分なかん水を行い、活着を促してください。かん水施設がなく、高温乾燥が続く場合には、気温の下がる夕方に植えたり、多少時期がずれても、夕立などの降雨があった後に定植するなどの工夫が必要です。やむを得ず、定植が遅れる場合には、通常より薄めの液肥をかん水代わりに与えることにより、根の活性をある程度維持することも可能です。
5
定植前後に大雨による土壌水分過多状態が続くと、地中の酸素不足により根の伸長が妨げられ、生育が長期間停止するので、土壌の酸素補給を積極的に行うことが求められます。「オキソパワーS」を定植前に10アールあたり40 〜60kg畑全面にすき込むことで、根が順調に伸び、生育遅延の予防が期待されます。5カ月間にわたり、酸素を出し続けます。
6
根の伸長停止は水分を吸収できないことによるカルシウムやホウ素欠乏が生じる可能性があります。「葉の縁が茶色く枯れている」「トマト等の果実の尻が黒い」「新葉が奇形になる」などの症状が現れたときは水溶性カルシウム剤の追肥をしましょう。微量要素欠乏の多くは、土壌のPHによる吸収阻害が原因であることもあります。実際に、これらの成分が不足しているのか、根の伸長停止等によるものなのか、正しい判断をするためにも、自分の畑の土壌分析を最低年1回は行うことをおすすめします。土壌診断をご希望の方は、乾燥させた土を支所の営農指導員等に提出してください(結果が出るまで1 〜2カ月ほどかかります)。
【カルシウム欠乏症の一例】
ハウス栽培における対策
1
ハウス内の温度上昇を防ぐために側面、妻面を開放して換気を図ってください。
2
遮光資材、送風機、ミスト散布等の資材を使用することも効果的です。
3
遮熱塗料をハウス天井部分に外側から塗布することにより、2〜3割程度、光量を削減できます。
例:アキレス(株) ファインシェード 遮光率20 〜 30% 販売金額12,650円(税込)※送料1缶1,100円(5缶以上の注文で送料無料)